A World Of My Own
わたしだけの世界
みんなはVRChatでインスタンスを立てるとき、どのタイプを選んでいるのだろう?
わたしは特に理由もないのだが、Inviteで立てることが多い。
誰かを招待しない限り、基本的には自分ひとり。
好きな景色を眺めたり、気になる場所を探索したり、誰にも邪魔されずに過ごすことができる。
考えてみれば、VRChatでは簡単に「わたしだけの世界」を作れてしまうのだ。
さて、今回訪れたのは『A World Of My Own』というワールド。
日本語にすると「わたしだけの世界」だ。
今回もそんな時間を楽しむつもりで訪れたのだが……。
まさか、こんな形で裏切られるとは思わなかった。
ちょっと変わった?洋風のお屋敷
ワールドに入ると、そこはアンティーク調の家具が並ぶ洋風のお屋敷だった。
温かみのある木製の家具、天井にはシャンデリア。
大きな窓からは柔らかな光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえる。
ここは寝室だし、目覚めたばかりの朝なのかも?
どうやら今いる建物は3階建てのお屋敷らしく、いくつもの部屋を探索できるみたい。
隣の部屋には、華やかなドレスを着せられたトルソーが2体。
窓際には金色の装飾が施されたカッコいい足踏みミシンが置かれ、周囲にはクローゼットやトランクが並んでいる。

別の階には、壁一面が本棚になった部屋もあった。
天井まで並んだ本、赤いソファ、テーブルの上にはティーポットとお菓子。
「こんなところで紅茶を飲みながら読書なんて夢じゃん」なんて思いながら探索を続ける。

書斎といえば隠し扉……と思い、隅々まで探してみたが、そういうものではなかった。
ほかにも植物に囲まれたバスルームや、食器と調理道具が並んだキッチンまで用意されていた。
ひとつ気になったのは、階を移動するときに階段ではなくハシゴを使うこと。
3階建ての洋風のお屋敷に……ハシゴ?
ちょっと変わった造りだなぁとは思ったものの、特に深く考えることもなくひと通り部屋を見て回った。
そして、キッチンから続く玄関から外へ出てみることにした。
扉の向こうは、思っていたより大きかった
玄関を出て、まず目に飛び込んできたのは巨大な裁縫箱だった。
……ん?
でっかい裁縫箱??

目の前にはミシンや糸巻きも並んでいる。
いや、ちょっと待って???
「うわ……!そういう!?まさか……?」
何となく察して、思わず後ろを振り返る。
そこにあったのは、さっきまで探索していた3階建てのお屋敷。
……のお人形の家!!
やられた~~~~!!
そう、わたしが今まで普通のお屋敷だと思って歩き回っていた場所は、巨大な勉強机の上に置かれたドールハウスだったのだ。

なるほど、そういうことか!!
振り返ってみれば、あのハシゴも、ドールハウスだと思うと何だか納得がいく。
それなのに、玄関を出るまで全く気づかなかった。
すっかり騙されて正直悔しい気持ちもあるが、こういう仕掛けは大好きだ。
むしろ、気持ちよく一本取られたような感覚。
面白いなぁ!!
小さなわたしと、大きな日常
仕掛けに気づいたところで、改めて周囲を探索してみる。
ドールハウスが置かれていたのは、どうやら誰かの勉強机らしい。
大きなミシンに、色とりどりの糸巻き、ハサミやメジャー、カッティングマット。
さっきまでいたお屋敷とは打って変わって、作業机が置かれた普通の部屋といった感じ。
ただし、どれもこれも巨大だということを除けば。
裁縫道具の並ぶ机を歩いていると、あることが気になった。
そういえば、あのドールハウスには肝心のお人形がいなかったような……?
寝室もキッチンも、ドレスまで用意されていたのに。
……もしかして、わたし自身がお人形だったり?
なんて考えると、ちょっと面白い。
そんなことを思いながら机を探索していると、積み上げられた本を見つけた。
そこにはUnityやBlenderなど、わたしにも馴染みのある制作ツールの名前が並んでいた。
裁縫だけではなく、デジタルのものづくりにも興味がある人なのかな。
そんな机の上に、なぜか自分サイズの扉があった。扉だけ。
扉に用意されたギミックを使うと、今度は部屋全体を見渡せる場所へ移動できた。
さっきまで巨大だった裁縫道具も、ドールハウスも、一度に見渡せる。
こうして部屋全体を眺めていると、今度はこの部屋の持ち主が気になってきた。
見えない誰かの、好きなもの
この部屋の持ち主は、一体どんな人なんだろう。
まず気になったのは、やっぱりミシンだった。
知り合いに服飾関係の人がいることもあって、裁縫が得意な人なのかな、なんて想像してみる。
積み上げられた本を見るに、勉強熱心な人なのかもしれないし、勉強机があるということは、まだ若い人だったりするのかな。
もちろん、どれもわたしの勝手な想像でしかない。
けれど、こうして誰かの部屋を眺めていると、ここに置かれたものから少しずつ持ち主の姿が見えてくる気がする。
それに、UnityやBlenderの本まであるのが、なんだか引っかかる。
もしかしたらこの人は、現実ではドールハウスを作り、デジタルでも自分だけの世界を作ろうとしているのかもしれない。

あるいは、ここはこのワールドを制作した人自身の部屋だったりして?
そんな想像まで膨らんでくる。
“わたし”だけの世界
部屋全体を眺めながら、ふとワールドのタイトルを思い出した。
『A World Of My Own』
わたしだけの世界。
最初は、ワールドを訪れた自分にとっての「わたしだけの世界」だと思っていた。
けれど、実際には誰かの勉強机の上に置かれたドールハウスだった。
だとしたら、このタイトルの「わたし」は、部屋の持ち主を指しているのかもしれない。
あの小さなお屋敷は、持ち主にとっての「わたしだけの世界」だったのだろうか。
でも、もうひとつ考えられる。
もし、あのドールハウスを歩き回っていたわたし自身がお人形だったとしたら?
あの寝室も、衣装の部屋も、書斎も。
小さな家の中こそが、わたしにとっての「わたしだけの世界」だったのかもしれない。
そう考えると、このタイトルは誰の視点から見るかで少しずつ意味が変わってくる。
自分だけの世界だと思って訪れた場所が、誰かの作った世界で。
そして、その中にもまた、別の誰かにとっての世界がある。
もしかしたらVRChatを楽しんでいる自分自身さえも……?
なんだか、面白いなぁ。
結局、あの部屋の持ち主がどんな人なのかは分からない。
裁縫が好きな人なのか、デジタルで何かを作っている人なのか。
それとも、わたしが想像した人物とは全く違う誰かなのか。
それでも、机に置かれたミシンや積み上げられた本を見ていると、その人が好きなものに夢中になっている姿をつい思い浮かべてしまう。
考えてみれば、VRChatのワールドだって同じなのかもしれない。
わたしが「綺麗だなぁ」と眺めていた景色も、「面白い!」と遊んでいた仕掛けも、誰かが好きで作ったものなんだよね。
そう考えると、わたしが普段訪れているワールドも、誰かにとっての「わたしだけの世界」なのかもしれない。
そしてわたしは今日も、そんな誰かの世界を歩いている。
A World Of My Own
アンティーク調のお屋敷を探索するVRChatワールド。1MonthWorldWorks 出展作品。
- ワールド名
- A World Of My Own
- 制作
- 襟草たぬ
- 収容人数
- 最大24人
- 対応環境
- PC(Windows)
- Public公開
- 2025年9月7日
